元領主で今大家。

ウマ娘でのサークル「未来への翼」2代目リーダーの備忘録。

逃げた者。継いだ者。

「カネミツさん、リーダーやってみません?」

先代リーダーは、3度突発的に逃げていた。

何の予告もなくリーダーが変わっては元に戻されること2回。何の予告もなくチームから脱退して出戻りすること1回(これは本当に焦った)。チャットやプロフィールで心身をやられている兆候が出ること数知れず。

その姿は、かつてWizonで「神託の盾」のマスターをしていた時の俺とカブった。何度かチャットで、疲れていないか?と聞いたものだが、話してはもらえなかった。

(こりゃやばいな…)

自信というか確信というか、はたまた過信か。

俺は、負のループを断ち切りたい。先代は、一兵卒として楽しみたい。その願いが合致して2代目になったと思っていた。これからの歴史は別のもっと良い道を行くだろう。そう信じていたはずだったのだが。

サブリーダー就任、リーダー承継、そして…初めての追放。

これらはすべて24時間以内おきに起こった事実…つまり、3日と経たずにサークルの運営体制が激変した…電撃戦の成れの果てである。

院政を行うつもりはありません!」

話はそれなりに出ていたとはいえ、ヒラからサブリーダーになって、そこからすぐにリーダーの交代劇である。普通は何が起こったかわけがわからなくなるはずだ。そこで、俺は、サークルの混乱を避けるために真っ先に宣言した。

「先代の路線を全面継承します」

もちろん、自分を押し殺してでも今まであるものを全部残すというつもりはなかった。俺は競馬はド素人だし、戦力も高くない、ファンもたいして稼げてない。真似せよというのは無理である。それに、なくて七癖というではないか。自分のカラーなんか、ほっといても勝手に出る。そんなもんだ。

昨日は右に行けと言っていたのに、今日から左に行けと言われるんじゃないか?そんな不安を一撃で払拭するために、まずは安心してもらいたかっただけなのだ。

話は少々戻るが、ちと動きが怪しい一件があった。

先代が戻った直後、ログイン勢との区別を目的に、週ノルマ300万のルールが追加された。俺がリーダーの座を引き継いだのはそのあとだった。

リーダー就任直後、これについての異見を拝見した。

「週カウントじゃなくて月カウントにしてほしい。イベントはなんとか完走できましたが、報酬ももらえずに追放されるのは悲しすぎます」

まあ、このへんは勘違いや連絡のすれ違いもあっただろう。おそらく、週によってどれだけやれるか不安定な生活なのかもしれない。これ以外にも、ルール改定直後に「まあなんとかなるか。でも土日は朝から深夜まで働き詰めだから大丈夫かな…」と言っていた方もいた。俺自身も夜勤で、現在職場はマネージャーが骨折したり発熱者が出るたび大騒ぎになったりとで、実はレンタル3回走る体力もないくらいキツい時がある。当時のルール改定議論では、俺は週150万を提案した。ただしこれは「軽すぎる」と反対を受けた(実際ないに等しい)。

(これはやはり、再考の余地があるかもしれない)

ちょこちょこコメントを書いた直後、先代が思いもよらぬ発言をした。SSはとってあるが、ひとまず要点を記す。

「このサークルの色はカネミツさんの好きなように染めてください!院政を行うつもりはありません!」

「明日の昼には出ていきます」

そこまで無能扱いするならば、なぜ俺にリーダーの座を譲ったのだ!

先代に恨みはない。しかし、院政発言は許さない。

キレた。

「12時に俺が追い出す。だから勝手に出ていくな!」

俺は、先代がここで一兵卒として楽しくやってもらうことを本気で願っていた。そして、リーダーのたらい回しも断ち切ることができる。リーダー自体はものすごいブランクはあったが、それまでにも流れというかやむを得ずというか、参謀役やリーダー代理みたいな動きをする事があった(やろうとしたというよりも、なんかそうなっちゃってた…という具合で)。だから、なんだかんだでそれなりにやれるだろう、という算段があり、俺自身も立候補しようと思っていた矢先でオファーがあったのだ。

おかしい…と思うことはあった。なぜ一兵卒としてやりたいはずなのに、出戻り直後にルール改定なんて大仕事をやったのか?何度も逃げ出すくらい追い詰められていたのに、なぜ俺には丸投げしなかったのか?

そう思ったが、疑いはしなかった。俺自身、今もメンタルをやられているし、こんな支離滅裂な行動になるのはよくあることだ。実際、俺もそうなったことがある。そして、本当はなんだかんだ言って神輿の上に乗せてほしかった、俺が「やっぱ俺じゃ荷が重いっすわー先代じゃなきゃダメっすわー」なんて言うはずだった…というのならば、なおさらわからなくはない。

「俺は飾りのリーダーをやるために、名乗り出たわけじゃない!」

こう見えて、この手の経験には事欠かない。そしてそのたびに、誰かが離れていった。

しかし、ここまで言われては一歩も退けない。

数年ぶりか。恐怖を蹴っ飛ばし、攻撃の意思を鞘から解放する。

「出ていくのは反対だ。俺が追い出す。もしも、今後もウマ娘を続けていきたいのであれば、追放なら24時間の加入制限対象外になる。すぐに次のサークルに入れば来月に報酬を受け取るには間に合う。だから勝手に出ていくな!」

何度も言うが、先代という「人間」に恨みはない。

再び自分の思い描いたサークルを作り直すにせよ、他のサークルで一兵卒としての自分の願いを叶えるにせよ、当代…自分が指名したあとつぎ…を侮ったことに対して断固たる対応をとり、今後再び楽しめる可能性が高まる最大限の譲歩を同時に行える、唯一の手段。

それが、「先代追放」だったのだ。

すぐには切れなかった。

他の方も言いたいことを言い合える最後のチャンスまで奪えなかったからだ。だから、追放までにある程度の時間を置いた。朝方に靴回しがよく行われているのだ。何か言い残すチャンスは充分だ。

しかし、言葉を発してくれたのはたった一人…彼と競馬やウイニングポストの話で盛り上がることのできた、ただ一人だけだった。誰も先代に声一つ掛けず、先代も話を見ていないのか、意図的に反応していないのかわからず終いだった。

2分遅れで、先代を追い出した。それから少したって、フォローも切られた。追放予告の段階で考えていた計画を遂行するため、すぐさま「週獲得ファン数ノルマは無期限凍結する」と、独断で緊急通達を行った。そうすると決めたいくつかの理由を述べるとともに。

これは本当に、あなたが望んでいた結末だったのか?もはや、確かめる術はない。

こうして、カネミツは名実ともに「2代目」になった。

3日と経たずに得た、泥棒猫、出世頭、独裁者の三冠をひっさげて。